起業家インタビューFind Japan株式会社が手がける対中国向けインバウンドマーケティング。成功の鍵を握るのは、中国人マーケターの人材育成

2018.02.15



中国におけるブームのひとつが日本旅行。とりわけ、個人旅行の比率は高まる一方で、ソーシャルメディアを活用してユーザー同士で情報交換を行い、好みの旅程を組んで日本に訪れる中国人観光客が増加しています。

いわば日本の企業や団体、自治体にとって、ありがたいお客様。巨大マーケットだけに、彼らのニーズや消費行動を把握しながら、しっかりと取り込みたいところです。

ところが、中国市場の分析や、それをもとにした効果的な施策を展開している企業や団体が驚くほど少ないのが現状。

なぜこのような現象が起きているのでしょうか。

今回は、中国人向けに特化したメディア「Find Japan」の運営をはじめ、中国人消費者ともっとも近いコンサルティングサービスを提供するFind Japan株式会社の西山社長に、日本企業が抱える課題と対中国向けのインバウンドマーケティングに関するお話をうかがいました。

中国人観光客のニーズに応える中国人向け日本情報メディアの成長と躍進

―月間コンテンツビュー2億超えの「Find Japan」ってどんなメディアなんでしょうか。

―西山
「新しい日本や知らなかった日本に出会う」をコンセプトに、中国国内のみに配信している、日本のインバウンド観光と越境EC購入情報に特化した中国人向けメディアです。

人気の高いグルメ情報をはじめ、買い物情報や観光情報など、中国人観光客がほしい日本の情報をすべて提供することを徹底しています。

日本で展開しているメディアとの大きな違いは、日本向けメディアはGoogleやYahoo!といったプラットフォームを意識した作りになっているため、検索エンジン対策などを念頭に置いた運営なんですね。

対する当社の「Find Japan」は、プラットフォームありきではなくコンテンツ重視です。WeChatや微博など、ユーザーの好きな方法でアクセスし、閲覧できるようにしています。

国内向けのWEBメディアも基本的にコンテンツ重視ではあるし、Facebookやアプリなどから自由なアクセスができるものも増えています。

とはいえ、プラットフォームを意識しない運営というのは驚きです。もしかしてその理由って、中国のインフラ事情が関係するんでしょうか?

―西山
そうですね。中国では、政治情勢によりGoogleなどの利用が規制されているため、独自の文化が形成されてきました。

このため、マーケティングを含め、他国で通用する手法が中国ではまったく通用しないということが非常に多いんですよ。

西山さんが中国に特化したビジネス展開を決断したのは、この独自の文化を築く中国市場の難しさと、それでも勝てると見込んだマーケットの魅力に駆り立てられたからだそう。

マーケティングにおける知識や戦略、手法は、アメリカで学んだものがほぼ世界各国で使えますが、それが通用しないのが中国。巨大な壁を痛感し、「壁が高いからこそ最初に叩こう。そこからスタートしたら、世界はもっと楽なんじゃないか」と考えたそうです。

このフロンティア精神が、中国市場の攻略につながったのですね。

ところで、マーケティング分野に浸透した「インバウンドマーケティング」という手法。でも、具体的に説明できるかというと……迷ってしまいますよね。

実はマーケティングの基本中の基本である「インバウンドマーケティング」

―そもそも「インバウンドマーケティング」ってどういうものなのでしょうか。

―西山
「これを買ってほしい」と消費者に打ち出していくプロダクトアウトではなく、消費者のニーズや行動様式に合わせ、自社の商品やサービスに興味をもってもらう目的で仕掛ける手法です。

「インバウンド」って耳にすると、なんだかわかりづらいですが、実はマーケティングの基本中の基本なんですよ。

ターゲットを明確に定めて、ターゲットに関するデータを徹底的に分析し、施策を作る。マーケティングを勉強する人が、まず真っ先に学ぶ理論ですよね。

いわれてみると、確かにそうです。

写真や動画などのコンテンツを充実させるとか、検索エンジンに上位表示させるとか、SNSで拡散させるとか、方法論にとらわれがちな人も少なくありません。しかし、そもそもの出発点として「徹底したターゲット分析」が行われていなければ、消費者に刺さるアプローチはできません。

もしかすると、日本企業が中国向けインバウンドマーケティングに苦戦しているのは、この「徹底したターゲット分析」を怠っているから……かもしれませんね。

―西山
日本企業や団体、自治体が陥りがちなのは、中国人の特性が分析できていないことと、プロダクトアウトになってしまっていることが大きいです。ここでまずズレが生じています。

中国人は、生活の中に議論が根づいていて、もっとも重要視するのがコミュニティの情報です。

これはどういうことかというと、たとえば芸能人が「この商品がいい」「ここの料理がおいしい」とおすすめします。すると、それぞれのコミュニティで議論をはじめるんです。「あの商品を使ったことがある人いる?」「あそこの料理を食べに行ったことがある人、どうだった?」と。

そこでさまざまな意見を出し合ったうえで、「いいね」となると、一気に消費行動に移ります。「爆買い」が起こるのもこのタイミングですね。

なぜコミュニティを作るのかというと、同じ中国人に騙されないためだそう。加えて、上海などは東京より情報が氾濫しているほどで、情報の取捨選択や良し悪しの判断がしづらい背景があります。

このため、防衛手段として、情報はすべてコミュニティで咀嚼してから行動に移る、という特性があるんだそう。

―西山
こうした特性を理解せずに、「ランディングページを見てくださいね」というようなことを企業がやってしまうと、一気に敬遠されてしまいます。

誤ったアプローチでは、企業が思っているほど成果が得られない。まずは議論してもらいやすい情報の流し方と、個人への働きかけ方が重要です。

日本企業の課題は、マーケティング理論を学んだ中国人留学生が解決できる

―そうはいうものの、中国人の特性を把握したうえで仕掛けるのは想像以上に難しそうですが……

―西山
日本人だけでやろうとするから成功しないのでは、と感じています。各企業に中国市場を分析できる人材がいないんですよ。

当社は、中国人スタッフが90%以上を占め、彼らが徹底してユーザー分析を行ったうえで、メディア運営やコンサルティングサービスを提供しています。

なぜ当社が中国向けインバウンドマーケティングに成功したかというと、誰よりも中国人の特性を知る中国人スタッフが現場で活躍しているからに他なりません。

とはいえ、Find Japanが各企業のマーケティングをすべて請け負うには人手が足りません。

そこで西山さんが立ち上げたのが「Find Japan Labo」。中国人マーケターの人材育成サービスです。

―西山
株式会社マイナビと業務提携し、中国人留学生を中心に、約3ヶ月間のマーケティング授業を実施しています。

募集をかけると毎回約200通の応募があるんですが、そこから8人ほどに絞り、即戦力になるマーケターを誕生させているんです。現在第6期生が学んでいて、今後も継続していきます。

「Find Japan Labo」は社会貢献活動だと自負している西山さん。彼ら中国人マーケターが、日本企業の課題解決のために活躍してくれることを確信しているからです。

―西山
特に中国人留学生たちに、生きるためのマーケティング理論を学んでほしいんですね。

現在の日本の大学で教えているマーケティングは、実践的なものではないので、これでは中国市場で通用しません。せっかく中国を知り尽くし、語学が堪能で勉強熱心な彼らの能力が、宝の持ち腐れになってしまう。

ターゲティングや施策を作れる人材が確保できていない日本企業。インバウンドの理論を学ぶ機会がない中国人留学生。だったらFind Japanがもつノウハウを中国人留学生に教えてあげることで、すべてが解決します。課題を抱える日本企業と、学ぶ場がなかった中国人留学生は、まさにお互いがWin-Winの関係なんですよ。

すでに大手企業で実績をあげている卒業生も多数いて、中国人の特性を熟知し、中国市場を把握している中国人マーケターは、期待通りの即戦力になっているそう。

Find Japanの企業理念を「世界一、多様性のある会社を作る」に定める西山さんらしく、国籍や年齢、性別まったく関係なく、みんなががんばれる環境にしたいと奔走しています。

西山さんのお話をうかがっているうちに、日本が良くなっていく明日が見えてきて、自然と高揚感に包まれました。

西山さん、お忙しいところありがとうございました。


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