起業HISTORY
1976年新潟生まれ。1994年よりコンピュータグラフィックスを学び始め、CG製作会社・ゲーム開発会社において各種アプリケーションのプラグイン開発・CG製作・及びテクニカルサポート等の業務に携わる。
「業界の常識にとらわれない発想」を意識しながら、エンターテインメント業界の発展に全力を注ぐ毎日。
株式会社デジタルメディアラボ(1996~)、株式会社バンダイナムコゲームス(2000~)、株式会社ドワンゴ(2012~)を経て2013年に独立。
起業のきっかけ
記者 まず、高橋社長にとって、今の会社を起業されたごきっかけというのは、どういったことでしょうか。
高橋社長 会社設立以前は某ゲーム会社に勤めていましたが、私の所属部署の役割は社内プロジェクトを横断的に俯瞰して効率化をサポートする仕事だったんです。社内のゲーム開発をする上で、開発効率を向上させることや今までできなかった表現を可能にするような技術的な提案・サポート・プロジェクト専用のツール開発をしていました。社内の枠にとらわれずゲーム業界全体に広めていきたいという思いが芽生え始めたことがきっかけで、独立にいたり、法人化しました。
記者 具体的には、どのようなツールなのですか?ゲーム特化の何かアプリケーションのようなものなのですか?
高橋社長 ゲーム用にも映像用にも使える3Dの汎用的なツールです。それぞれのプロジェクトのためにカスタマイズします。ゲームを作るときに市販のフレームワークを使って進めたものの、やっぱり他社とちょっと違ったゲームを作りたい、今までになかったようなゲームを作りたいっていうときには、市販のものではゲーム制作をカバーできない領域というのが存在してくるんですね。前職では、そういったカバーできない領域をカバーする仕事をしていました。これを環境開発と呼んでいました。社内のプロジェクトを横断して環境開発を行っていくうちに、社内だけじゃなくて、ゲーム業界全体で、提供することができたら効率がすぐに上がるんじゃないかなとか、ゲーム業界全体の技術レベルが上がるんじゃないかなと、そういったところを独立のきっかけにしました。
起業までの期間
記者 起業しようといざ思われてから、実際に起業しましたという期間というのは、どれぐらいでしたでしょうか。
高橋社長 実際に独立したい、起業したい気持ちは若い頃からありましたが具体的に考え始めたのは、30代の半ばくらいでした。実際にはそこからボンヤリと3~4年は考えていたと思います。いろいろな方に相談して準備を始めて、実際に独立に至るまでは更に1年くらいかかりました。
記者 一番最初に「起業したいな」って思ってから、実際起業したときまでは、「どういったことをしていこうかな」という考え方の変化などはありましたか?
高橋社長 そうですね。もちろん先ほどお話ししましたように、起業のきっかけとしては⾃分の技術⼒を使って業界全体に貢献したいというようなところもありましたけれども、それで⾷っていけるんだろうかと不安に感じましたね。ですから、仕事について選べるような立場でもなく、だけども志もある程度ありつつ、といった葛藤の中で気持ちの波はありました。
起業前後に苦労・失敗したこと
記者 起業準備中であったりとか、起業されたあとですね。それぞれ、何か大変だったこと、苦労したこと、失敗したなって思われたことってありましたか?
高橋社長 独立してすぐ仕事があるのか、営業経験がない自分が仕事を取ってくることが出来るのか、プレッシャーに感じていました。思いのほか順調に受注することができ、法人化しようと決意しました。ですが、具体的に何をしたら良いのかまったくわからない状況で、独立当初からお世話になっている税理士の先生には本当にお世話になりました。いろいろとご迷惑をおかけしてしまいましたが、今もその先生にお世話になっています。
記者 税理士さんとのお付き合いがあって、法人のときに良かったという話なんですけど、個人事業主になったときに、もうすでにそういう方とお知り合いだったんですか?
高橋社長 はい、そうです。個⼈事業主として独⽴するっていうときに、年末調整とか、確定申告とかも全然わからなかったので、これはプロフェッショナルと契約しないと、どうにもならないよなっていうことで、飲食店を経営する知⼈の紹介で税理⼠の先⽣とのお付き合いがはじまりました。
記者 営業活動についてですが、一番最初にクライアントさんを獲得できたのって、どういったことをされてたんですか?
高橋社長 今でもそうなんですけど、結局⼈とのつながりなんですよね、お仕事って。独立当初も、もともと⼀緒にお仕事をさせていただいた⽅から、お仕事をいただきました。初めから全くお仕事がないっていう状況が生まれることはなく、⼈に恵まれているなっていうのはもう強くその頃から今に⾄るまで感じますね。⼈とのつながりが全て。これが⼀番⼤事なことだと思っていますね。
記者 特に何かWebプロモーションをするとか、他の何かに力入れたとか、そういうところというのは‥
高橋社長 SNSで広報しました。業界内のニッチなお仕事ですから前職やこれまでの仕事で知り合ってきた同じ業界の人に対してプロモーションしました。
記者 起業されてからは何かありましたか?
高橋社長 起業してから現在まで、有り難いことにお仕事には恵まれていて、大きな難もなく経営はできていますが、⼀番苦労しているのはスタッフの確保ですね。弊社はPythonという⾔語を強みにしているんですけども、母数が非常に少ないです。もともと少ない所に、さらにゲーム開発に興味があって、なおかつ3DCGに対しても興味を持っている⽅を探しています。そこから本当に育ってくれそうな人を確保するのが⾮常に難しいですね。
記者 Pythonを学ぶための勉強会などはあるんですか?
高橋社長 ゲーム業界の中での勉強会は、IT業界に比べると少ないです。最近は少しずつ増えているようです。私自信もPythonを使った開発⼿法のセミナーや勉強会の講師を依頼されてお話しすることがあります。勉強会の終了後に懇親会や軽食を交えながらコミュニケーションを取ることが出来るようなものもあります。
お世話になった人
記者 高橋社長が起業準備中に、お世話になった方々というのは、どういった方々でしたか?
高橋社長 起業準備中には本当にいろいろな⽅にお世話になりました。
本当に皆様に助けていただきました。独立前の仕事関係の皆様であったり、プライベートな付き合いから助けていただいたり、皆様に感謝しています。税理⼠の先⽣を紹介していただいたのは、近所のよく通っている飲⾷店のオーナーさんでした。公私ともにいろいろなところで、皆さんにお世話になっています。
記者 その飲食店のオーナーさん、何か相談を投げかけて紹介してもらったとか、そういう感じなんですか?
高橋社長 そうです。飲みに⾏って、そのオーナーさんと話している中で、「独⽴するんだよね」と。当然オーナーさんも経営者の⽅なので、「じゃあ、顧問税理⼠はどうするの?」みたいなことを聞いてくださって、「何それ」と。そういったところからいろいろなことを教えてもらいながら、「じゃあ紹介するよ」っていう流れでした。業種は全く違いますが、知人の紹介という安心感はありました。
起業前後の変化
記者 実際、独立されて、社長になられて、ご自身であったり周りの環境で、何か変わったことってありましたか?
高橋社長 私⾃⾝は特に変わったという感覚はないです。むしろ、私に対する接し⽅は変わるのかもしれないと思っていました。有名な会社に勤めていましたが、辞めて独⽴してただの個⼈になりましたから、ちょっと接し⽅に変化が⼈も現れるんじゃないかと恐れていましたが、予想に反して全くそのようなことはなく、皆さん同様に接してくださっていて、とてもありがたく感じています。
記者 もともと独立されてから、一番最初はお一人でしたか?
高橋社長 完全に1⼈で始めました。途中から領収書や経理関係の事務作業をアウトソースしましたが、本業の部分としては1⼈で始めの数年は働いていました。
記者 営業は、今も、社長自身でされているんですか?
高橋社長 そうですね。まだ会社の名前よりもエンジニアとしての私の名前のほうが仕事を受注するにあたって有利な状況ですので、私が営業をしています。
記者 仕事は依頼が来てお受けするのですか?それとも新規の営業を取りに行くみたいな感じですか?
高橋社長 新規といっても完全に弊社を知らない企業へアポなし訪問やダイレクトメールを飛ばすような営業はありません。既存のルートから紹介やご相談の依頼をいただいて、弊社ならお力になれることがあるかもしれないし、ないかもしれないといった情報共有から新規を広げています。
記者 じゃあやっぱり、今まで築き上げた人たちと絡む回数をより増やしながら、いろいろな依頼をしてもらう機会をどんどんつくっていくっていうのが営業っていうところですね。それをやるのもやっぱりSNSですかね。
高橋社長 そうですね。メールや電話のような手間がかかる方法よりも、手軽なSNS経由でご相談いただくことが多いです。
思い出の一枚
記者 最後に、思い出の一枚をください。
高橋社長 これは私が29歳の時に受賞したMaya Masterという賞の記念品です。Maya開発元のAlias社主催のセミナーでMayaの使用例を発表させていただく機会がありまして、1タイトル中での様々な使用例を提示したことによって業界内では一時話題になりました。そこで、知人の勧めで毎年世界で8名が選出されるMayaMastersにエントリーをしましたら有り難いことに受賞となりました。別の仕事と重なってしまい授賞式には参加することができなかったのですが、翌年のAlias社主催のユーザーセミナーで授賞式を催していただきました。Mayaを深く理解していたおかげで様々な問題解決の提案ができているのが独立につながっています。受賞は一つの通過点ですが、これからも3DCG技術の発展に貢献していきたいです。

記者 高橋社長、本日はありがとうございました。
- 会社名
- スマイルテクノロジーユナイテッド株式会社
- 住所
- 神奈川県横浜市西区平沼1-40-9-917
- 事業内容
- コンピュータソフトウェアの企画・設計・開発及び販売、保守並びに顧客へのサポート業務
コンピュータソフトウェア開発に関する調査及びコンサルタント業務
ゲーム、映像、音楽等のコンテンツの企画・制作・販売
インターネット等のネットワークを利用したシステムの企画・設計・開発・運用・販売及び保守 - 企業理念
- ゲーム業界のハブになる
顧客に求められるものを提供するのではなく、顧客が本当に必要としているものを提供する - 独自の強み
- ・PythonでのCGアプリケーション開発力
・他社では取り組んでいない開発手法の改善を行っている - WEBサイト
- https://www.stu-inc.com
- 選んだ理由
- コンピュータグラフィックスに興味があったから。
気が付くと自然とゲーム開発に携わっていました。 - 今後の展望
- 競争力が増してきた海外勢に負けないよう、日本のゲーム開発の技術力をさらに発展させることに貢献していきたい。
- 趣味・休日
- 映画鑑賞・ソフトダーツ・けん玉
- 尊敬する人
- 一人に絞れないのですが、強いて言うなら勉強を自然とできる人と自己犠牲の精神のある人です。